八王子市長池公園の雨庭(レインガーデン)の計画・デザイン①

八王子市からの八王子市からの業務委託「雨水流出抑制に資するグリーンインフラ活用推進業務」として株式会社ハビタでは、市の長池公園に雨庭・レインガーデンを計画デザインし、ワークショップにより施工を行いました。本記事では、公園内地点Bの計画・デザインの内容を紹介します。
公園の現状
八王子市の長池公園は里山の薪炭林を広く残し、イヌシデやコナラ等の落葉樹林の木陰のトレイルを歩くことができる気持ちの良い自然公園です。この公園は谷戸地形にあり、スリバチ状になった窪地地形では降雨時に斜面からの表流水が園路に流出し、雨水が側溝から溢れたり、ぬかるみができるという被害が発生していました。

今回計画した対象地は谷戸奥を堰き止めてつくられたため池である長池に隣接し、丘陵地のトレイル(かんさつの道)の入口にあり、豪雨時には斜面のトレイルから泥水が園路へと流出し、園路がぬかるむ状態でした。園路は転圧締固めされており、浸透能がかなり低い状態でした。


工学院大学の平山研究室のご協力により実施した土壌貫入試験結果では、園路は浸透や植物の根の侵入は難しいほど硬く、植栽帯については40cm程度までは植栽可能な硬さでした。また、浸透能は園路はグランドよりやや浸透する程度ととても低く、植栽帯の透水係数は50〜100mm/hr、深度40cmではほぼ浸透が見込めない状態でした。
泥水が流出しぬかるむ地点には、転圧された園路に囲まれた植栽空間がありました。この植栽空間を中心に浸透・貯留する雨庭をつくり、ぬかるみを緩和させることを狙いました。雨庭の方向性としては、園路を流下する泥水(表流水)を横断溝で受け止め、植栽地に掘った窪地へ導水し、窪地で貯留、底面から浸透させます。さらに竪穴で鉛直方向の浸透を強化し、窪地に植栽を植え付け、根の発達により浸透能を向上させることとしました。

雨庭の計画デザイン
以上を踏まえて雨庭(レインガーデン)を以下のように計画しました。
・園路からの表流水を導水部で受け止め、雨庭に導水する。
・雨庭は深さ500の窪地貯留とし、園路から底面まではなだらかに擦り付ける。
・底面に鉛直方向への浸透を促進する竪穴3つを設ける。
・現地は盛土地形で土壌が硬く、深さ30cmほどの植栽溝を設け、現地黒土にバーク堆肥を混入した土壌層を植栽基盤として設ける。植栽根による土壌改良(団粒構造化)も期待する。
・オーバーフローは園路反対側の谷地へ溝にて接続し排水。

植栽は、長池奥の特別保全ゾーンのハンノキ林とその林床の湿性植生をモデルとし、園路身近で観察・鑑賞できるようにしました。園内の実生・種子より園内ナーサリーで育成されている植栽材料を使用しています。
●中木:ハンノキ、イヌコリヤナギ
●低木:イボタノキ、メギ
●水生植物:カサスゲ、ミヤマシラスゲ、オニスゲ、サワギキョウ、ヒロハノコウガイゼキショウ、コアゼガヤツリ、ミズオトギリ、ミゾソバ等
現地の湿生植物を材料とした植栽は、現地土が硬く、植栽基盤層を設置するもの実験的な試みであり、根付かないものもあることを前提とし、基本的には場所に適応するものだけが残るという設定を許容するようにしました。
対策量は貯留量は窪地貯留により2.44m3、浸透量は面8.85m2✕0.05m/hr(浸透能)=0.44m3で、流出抑制量は合計2.88m3と算出しました。
竣工の状況
2025年11月に事前施工、12月に本施工を市内の造園事業者とのワークショップとして実施しました。竣工した雨庭の状況を以下に写真で示します。




窪地に湿性植物を植えるという手法は、シンガポールのランドスケープデザインで見たのですが、いい雰囲気があり気に入っていました。窪地で集水した雨水が貯まることで、湿性の植物の生息環境としても活かすことができれば適所適生です。幸いこのポイントの土質は粘土質で硬く、水も溜まりやすいため、出水期等は常時水がたまり、トンボが飛んできてヤゴも育ち、カエルもいるようなビオトープになっていく可能性もあります。竣工後に降った雨では水が溜まって満水近くまでの池となり、ゆっくりと日数をかけ雨水が減っていく様子も見られました。雨が逆に楽しみとなる雨庭・レインガーデンとして、毎回変化がありそうで、訪れるのが楽しみです。
26年4/23(竣工4ヶ月後)追記。公園指定管理者から、雨庭が泥水を含んだ排水を受け止め、園路に泥が流れにくくなったと感じています、と連絡をいただきました。また、雨庭・レインガーデン周辺にはギンラン等の早春の野草が咲くようになったということです。嬉しい報告でした。



