八王子市長池公園の雨庭(レインガーデン)の計画・デザイン②

八王子市からの「雨水流出抑制に資するグリーンインフラ活用推進業務」を受託し、株式会社ハビタでは、市の長池公園に雨庭・レインガーデンを計画デザインし、ワークショップにより施工を行いました。本記事では、公園内地点Aの計画・デザインの内容を紹介します。

公園の現状とデザインの方向性

対象地の地形は窪地部分にあり、両側の園路および園路脇の側溝から表流水が流れ込む位置にあります(図1)。側溝も泥により目詰まりを起こしており、結果、降雨時は側溝から泥水が園路に溢れる状態を繰り返していた。図2にあるように、園路には平常時も泥が堆積した痕跡が残っていました。

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図1 対象地の位置と表流水の流れ
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図2 対象地の状況

工学院大学の平山研究室のご協力により土壌貫入試験結果および透水試験を実施しました。雨庭予定地は、落ち葉や腐葉土の発達が見られ、表土は柔らかかった。園路と同程度の高さから下は0.7~1.5 cm/dropの硬さとなり、雨水の浸透や植物の根の侵入が期待できる硬さでした。
地面より50cm掘削した雨庭底面想定の窪地の土壌は0.7 cm/drop程度でありやや硬めであるが、40cm深付近では2cm/dropとなるなど、雨水の浸透が期待できる土壌層の分布も見られました。

このような現況に対して、泥水が流出する園路に隣接して植栽地が存在しました。この植栽地に園路の泥水を側溝から導水し、浸透・貯留させ、泥水被害を緩和させることを計画の方向性としました。

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雨庭・レインガーデンの計画の方向性

雨庭・レインガーデンのデザイン

植栽地での窪地貯留を基本とし、窪地の最大深さは50cm、地表からなだらかに掘り下げます。園路のU側溝上部を切り欠き、導水スロープにより植栽地窪地に導水します。導水部は泥除けも兼ねて石張りとします。さらに竪穴による鉛直方向への浸透を促進。窪地の斜面、底面には植栽を植え、植物の根の成長による浸透能の向上も期待します。
貯留量は窪地貯留により6.88m3、浸透量は窪地擦り付け部と底面で1.59m3、流出抑制量は合計8.47m3と算出されました。

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長池公園雨庭・レインガーデン(地点A)のデザイン

植栽は、本地では植え付け無しでも施工後の種子散布、周辺からの侵入により植栽が期待できるが、グランドカバーとしてコナラ林の林床の植物を植え、シェードガーデン(半日陰の林床ガーデン)として鑑賞できるようにししました。里山の植生の遺伝子撹乱を避けるため、可能な範囲で園内の実生・種子より園内ナーサリーで育成されている植栽材料を使用します。

●中木:ミツバウツギ、イボタノキ、ヤナギ、ヤマアジサイ(ハビタ)
●地被植物:タチツボスミレ、ヤブミョウガ、ミヤマシラスゲ・カサスゲ、ミソハギ、フイリヤブラン、ツワブキ、トクサ、ジャノヒゲ

植栽は根付かないものもあることを前提とし、基本的には場所に適応するものだけが残るという設定を許容します。雨庭設置後は、指定管理者により選択的除草(なるべく植え付けた植栽種を残すように、他の植生の除草)等の維持管理を行うこととしています。

雨庭・レインガーデンの施工および竣工写真

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u側溝の切り欠きからの導水部の施工
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長池公園雨庭・レインガーデン(地点A)竣工写真 
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長池公園雨庭・レインガーデン(地点B)竣工写真 
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竣工2ヶ月後の新春のレインガーデン。泥水が園路に出なくなり、タチツボスミレが咲いた

竣工2ヶ月後、公園管理者から以前は大雨が降ると園路上に泥が溜まってしまっていましたが、最近は全く溜まっていないとの連絡をいただきました。

U側溝を砕くことは勇気がいることかもしれません。しかし側溝は園路等の表面上の雨水を集水するものであり、上手く側溝からの雨水を導水できると、下水道に流出する前にその土地で浸透貯留させることができるようになります。また、側溝が目詰まりし、機能不全に陥っているケースもよく見られます。泥水が堆積しやすい場所では、毎回側溝の泥さらいするのも維持管理の負担が大きく現実的でありません。そのような場所では、側溝から泥水を流出させても良い場所を用意し、導いてあげることにより、側溝への堆積の負荷は減り、機能が維持できるようになります。これは河川技術では流量負荷を負担する「遊水地」的な発想であり、側溝という人工的な水系にも雨庭・レインガーデン的な遊水地を接続させることで、下水道流出負荷を減らし、管理負担も軽減させる、グリーン&ブルーインフラとしての持続可能な水系を実現できるのではないでしょうか。